雪が降っている、こんな真夜中に、窓の外をひとり歩いてゆく者がある。私が彼に目をとめると、彼もこちらを見た。ぼろぼろの衣をまとった、疲れはてた、旅人ではないか。さらに見れば、腕と脚と頭とに、包帯を巻いている。血のにじんだ跡のある包帯は、泥や…
燃えあがる夏の日、南向きの私の部屋はおそろしく暑く、私は部屋に入るなり窓を開けて、椅子に腰をかけ、風が通うのを待ったけれども、風そのものが燃えていて、いっこうに涼しくならない。暑さにぼんやりとした心が、やがて妙に、うっとりとしてきた。背も…
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