(無題)

 異常な興奮状態。あらゆるものに苛立つ。あらゆる相手に食ってかかる。真夜中の雨のなかを歩きまわる。これといって理由もなく。そんなことはあるまい、何か理由があるはずだ、よく内省して問題点を発見し解決せよ、などと注意されそうな気がしてあわてて内省する。すると問題点とおぼしきものは一つしか見当たらない、すなわち「世界が美しすぎるからだ」。わけが分からない。世界が美しいと感じられるのなら、お前は幸福なのではないのか。然り、幸福なのだ。苦しいほど幸福なのだ、その幸福が巨大すぎて、容易には自覚できないくらいに幸福なのだ。幸福すぎて自殺する人間というのはいないものだろうか。