青空

 君を殺そう。もはや君が君であり、私が私であるという、二人を隔てる障壁は存在しなくなるだろう。君を扼殺する私の手に、私に抗う君の渾身の力、恐怖にたかまる君の脈、君の中で狂奔する血の熱さが伝わり、それらが失われるまぎわの極点において、君の生命の炎は私に燃え移るだろう。したがって君は失われるわけではない。単に、君は私と等しくなり、君は私として生きるのだ。そして私は君となる。そのようにして私たちは合一する。そのとき世界は変容する。なぜなら、今ここにある世界は、個と個がそのように溶け合うことを許さないからだ。したがって、現実にそれが起こってしまったとき、世界の側が変容せざるを得ないのである。君たちを殺そう。私の愛するすべての者たちを殺そう。私が私自身のように愛し、しかも決して私自身ではありえないすべての者たちを、殺そう。私の手は君たちの血に濡れるだろう。無辜の仔羊を屠る司祭の手のように、私の手は君たちの美しい血にまみれるだろう。私の与える死は、君たちにとり恩寵となるだろう。私が神であり、私が遍在する、私が万有である私の天国で、君たちは幸福になるだろう。君たちは、互いに君たち自身であるすべての愛しい者たちとともに、手をとりあって踊るだろう。鳥たちは歌うだろう。楽の音は鳴りやまないだろう。空はかぎりなく青いだろう。