盛夏

 日輪の馬車が空の高みを駆けてゆく、夏である。私は怠惰に地面に横たわり、陽光に肢体が灼かれるに任せている。馬車の蹄にかかって倒れ、立ち上がる気力もなく、このまま朽ちてゆくつもりである。首を廻らしてみれば、土の上には虫けらども、小さなとかげ、みみずの類の死骸が転がり、朽ちてゆく、あるいはすでに朽ちてほとんど土に溶けている。すべて、あの蹄にかかった仲間たちだ。空は群青に近いほど青く、陽光はまばゆく、まばゆいあまりに、むしろ闇に近い。
 死骸には蟻が群がり、また、わずかな翅のかけらだけを残して土に溶けたもののの近くで、夏の雑草が力強く育っている。幾本もの茎が、空へ向かって太々と伸び、黒に近いほど濃い緑の葉を茂らせている。炎のような風が、草の葉、木々の葉に吹きつけ、荒々しい響きを立てる。その響きはこう告げる、強き者、猛き者のみが生きるに値する!
 ゆえに私は朽ちてゆく。しかし、徐々に朦朧となってゆく意識のなかで、私は幻視する。彼ら強者たちもまた、やがては滅びてゆくのだ。秋ともなれば、彼らの果実は赤く、彼らの葉は赤く、太陽も西の空に赤々として、血のように滴り、土の上に落ち、大地の深みに沈んでゆくのだ。